今度は少し長いお別れになるかも知れない


今日は久しぶりに湯船につかった。仕事の関係上、最近はほとんどホテル住まいだから、いつもはシャワーを浴びるだけで済ませるのだけれど、今日ばかりは湯に身体を預けたかった。しかも、とびきり熱い湯に。湯がたまるのを待つ間、いろいろなことが頭を駆け巡った。年が明けてからというもの、悲しい報せが多く届いている。それを聞いて涙を流すことはないし、叫び、喚くこともない。だが心には穴があき、その穴を目がけて風が吹き抜ける。しまいには自分がその穴からどろりと溶け出してしまうような感覚さえある。


服を脱ぎ、バスタブに収まった私は45℃の湯の中に埋まるように顔まで漬かり、しばらく動かなかった。息はできないが不思議と苦しくはなかった。ふと、ある歌の一節が、桜の花びらがはらりと風に舞うように脳裏に浮かんで消えた。その昔、嫌なことがあるといつも思い出していた曲だった。


"プリーズプリーズ目を閉じて 忘れてしまいなよ

そんな現実は ピーナッツバターの海に沈めて"