君と会えたことが過ぎた季節の意味
私は孝行息子なので、1ヶ月に1回ぐらいは実家に帰って親や兄弟に顔を見せる。寝るのはかつて私が使っていた部屋で、今は弟がその部屋の主になっている。6畳の部屋に布団を2枚敷いて、電気を消して、弟といろいろな話をするのが、私の密かな楽しみだ。
彼は、友達が少ないと嘆いていた。
「お兄ちゃんには友達が大勢いていいよね。中学の時にさんざんバカな話をした友達、高校の時にいつも弁当を食べてた友達、大学の時に一緒に映画を見ていた友達、ゼミの友達って。いっぱいいるじゃん。」
「兄ちゃんより友達が多いやつなんて、この世にはゴマンといるだろうけどね。うん、みんないい友達だよ。」
「いいよなあ。おれは、そういうのいなくてさ。友達が少ないんだ。」
「それは、ある程度当たり前のことなんだよ。人ってのは成長するんだから。その過程で付き合う人が変わるってのは自然なことなんだよ。それなのに、友達が少ないなんて言ったら、そんなの、その友達に失礼だよ。」
「そういうもんかなあ。」
「そうだよ。だけど、成長していく中で、それでも未だに下ネタ言い合ったり、昔話に花が咲いたり、がんばってる姿に刺激をもらえたり。そういうのが友達なんじゃないかな。」
「………。」
「友達が少ないって思うより、今いる友達を大切にしようって考えた方がよっぽどいいよ。」
「………。」
「一番やって欲しくないのは、友達がほしいからって自分を偽ることだな。偽ってる自分には、偽ってる友達しか寄ってこないし、そういう友達は続かないじゃん。」
「………。」
なんだ、もう寝てるのか。せっかく人生の先輩としてありがたいアドバイスを送ってやったのに。それにしても、今夜はぐっすり眠れそうだ。起きたら、久しぶりに卒業写真でも開いて、あの頃の友達に会いに行こうかな。